末広の意味や押さえておきたい正しい使い方、注意すべきマナー

日本では、先へ向かって広がる形のことを「末広がり」と呼び、縁起が良いと捉えられます。たとえば、漢数字の「八」は末広がりの一例です。同様に、扇面を広げた形も末広がりであることから、扇子は古くから縁起物として用いられてきました。今回は、お祝い事で使われる扇子の「末広(祝儀扇)」についてお伝えします。末広に込められた意味や、正しい使い方、お祝いの席でのマナーについても解説しますので、ぜひ参考にお読みください。

末広の意味や基礎知識

「末広(すえひろ)」とは、どのような小物のことを指すのでしょうか。日常的に使う機会は少ないものの、末広は大切な和装小物の一つです。初めに、末広に込められた意味や使用する場面、基本的な使い方、末広の種類などの基礎知識を解説します。

末広に込められた意味

「末広(すえひろ)」とは、お祝い事に用いられる扇子のことを指します。末広という名前は、扇子を開くと先へ向かって広がる、末広がりの形をしていることが由来となっています。幸せな未来へ向けてしだいに道が開けていくような、縁起の良い意味合いが込められているのです。そこから、末広は「繁栄」を表す縁起物とされ、古くからお祝い事のほか、贈り物や記念品として用いられてきました。なお、末広のことを「祝儀扇(しゅうぎせん)」と呼ぶこともあります。

末広を使用する場面

末広は、主にお祝い事で礼装の着物を着用する際に、和装小物として使われます。現代では、結婚式で使われる機会が多いといえるでしょう。

 

たとえば、既婚女性の第一礼装である黒留袖は、結婚式では新郎新婦の母親が着る着物として知られています。また、女性の略礼装である色留袖は、新郎新婦の姉妹などの親族が着ることが多い着物です。末広は、これらの黒留袖や色留袖を着る際に用いられることがあります。

 

また、結婚式では男性の第一礼装である黒羽二重五つ紋付(黒紋付)と合わせて末広を使用することもあります。黒紋付は、新郎や仲人、新郎新婦の父親などが着ることが多い着物です。婚礼衣装が和装の場合、新郎が末広を持つこともあります。

末広の基本的な使い方

末広は、基本的には帯に挿したままにしておきます。そして、挨拶の場面などで必要な時のみ、帯から取り出して右手に持って使います。挨拶に末広を使うのは、立礼をする場面や、座礼をする場面などです。末広を手に持つことによって、お祝いの席に相応しい改まった印象を与えることができます。末広の挿し方や持ち方について、詳しくは後述するため、ぜひ併せてお読みください。

末広の種類

末広には、女性用と男性用で種類に違いがあります。

 

女性用の末広は、黒塗りの骨で、地紙の面が金または銀のものが一般的です。なかには、黒塗りの部分が金彩で装飾されたものや、白地に金箔や銀箔が押されたものなど、デザインにバリエーションがあります。また、女性用の末広には、ややカジュアルなデザインのものも見られます。骨の色が黒以外のものや、地紙の色が金や銀以外の末広は、略礼装である訪問着と合わせて使うことも可能です。

 

一方で、男性用の末広としては竹骨に白の地紙が使われている「白扇(はくせん)」が挙げられます。白扇の中には、男性の正礼装であるモーニングコートに合わせて使いやすい「モーニング扇」もあり、和装と洋装のどちらでも使えるのが特徴です。

末広の正しい挿し方・持ち方

結婚式をはじめとしたお祝い事で末広を使う際は、正しい挿し方や持ち方を押さえておきましょう。ここでは、お祝いの席の必需品である末広の使い方について詳しくご紹介します。

末広の正しい挿し方

女性の着物に末広を挿すときは、扇子を開く側を上にした状態で、紙の面を正面にして帯と帯揚げの間に差し込みます。挿すのは体の左側で、差し込んだ末広の先端が、帯から2~3cm出る程度にすると良いでしょう。男性の着物の場合、末広を挿すのは着物と角帯の間です。女性の着物と同様に、体の左側に挿しましょう。その際、地紙が見えるように挿すのがポイントです。

末広の正しい持ち方

末広を持つときは、まずは右手で末広の根元を持ち、外側の骨の部分に人差し指を添わせるようにします。人差し指以外の4本の指で末広を包むように持つようにすると良いでしょう。さらに、左手を末広の下に添えて、帯の前におへそのあたりの高さで構えます。末広を挨拶に使う場合は、このような持ち方で立礼をすることで所作が美しく見え、改まった印象になります。和装で結婚式に参列する場合には、式場でのさまざまな挨拶の場面で末広を持つ機会があるため、正しい持ち方を身に付けておくと安心です。

末広を使う際に避けたい行為

ここまで末広の使い方についてお伝えしましたが、お祝いの席で末広を使う際は注意点もあります。末広の使い方で避けておきたいのは、扇子を広げてあおぐ行為です。

 

そもそも末広はお祝い事での挨拶などに使う扇子であるため、涼を取るための道具として使用すると、マナー違反となってしまいます。末広を使うことには、儀式の際に相手への礼を示す意味合いがあります。あくまで礼装の身だしなみとして儀礼的に身に付ける小物のため、本来の用途とは外れた使い方はしないようにご注意ください。

 

なお、浴衣などに合わせて涼を取るために使われる扇子は、一般的に「夏扇子(なつぜんす)」と呼ばれるものです。同じ扇子でも、夏扇子と末広では使う目的がまったく異なります。お祝い事の準備で和装小物をお探しの方は、目的に合った扇子をお選びください。

おめでたい意味が込められた末広でお祝いの気持ちを伝えましょう

お祝い事に使われる扇子の「末広」について、言葉の意味から使い方までお伝えしました。先へ向かって広がる形をした末広は、繁栄を思わせることからおめでたい意味が込められた縁起物です。古くからお祝い事に用いられてきた小物で、現代でも結婚式をはじめとしたお祝いの儀式に欠かせない大切な品物だといえます。和装で末広を手に持って挨拶をする所作は大変美しく、礼装の着物姿にさらに改まった印象を与えてくれるアイテムです。

 

専門店の伊場仙では、お祝いの席でお使いいただける末広(祝儀扇)を取り扱っております。末広は礼装の着物と併せてレンタルすることもできますが、購入してご自身のものをお持ちになるのもおすすめです。扇子は記念品として贈り物に選ばれることもある縁起の良いアイテムで、末広は大切な方の結婚式の思い出になることからもご好評いただいている商品の一つです。礼装の着物におすすめの末広をお探しの方は、ぜひお気軽に伊場仙までお問い合わせください。

 

伊場仙は、400年の社歴を持つ老舗です。末広のほかにも、江戸扇子や飾り扇子をはじめとした数多くの扇子や団扇を取り揃えており、専門店としてシーンに合わせた選び方をご案内しております。素材にこだわり、職人による手作業で作られた扇子は、長く愛用していただけるのが魅力です。高品質な末広をお探しの方は、伊場仙の便利なオンラインショップをご利用ください。