えびす講とは?行われる時期や由来、全国的に有名なお祭り

えびす様をお祀りする「えびす講」。えびす様といえば日本の神様の一人で、七福神に含まれることでも有名ですね。釣り竿を手にして、大きな魚を抱えている姿をどこかで見かけたことがあるでしょう。豊漁をもたらすとして漁師や農家に信仰されているほか、商売繁盛の神様として商家にも信仰されています。「えべっさん」などと呼ばれて、日本では民間で広く親しまれている神様です。

 

この記事では、そんなえびす様に関する行事である「えびす講」について解説します。えびす講の基礎知識から、国内の有名なえびす講までご紹介するので、ぜひお読みください。

えびす講とは

「えびす講」とは、一体どのような行事なのでしょうか。また、えびす講はどんな時期に行われるお祭りなのでしょうか。初めに、えびす講に関する基礎知識をご紹介します。

えびす講の行事

「えびす講」は、旧暦10月頃にえびす様をお祀りする行事です。「講」という言葉には、信者の集まりという意味合いがあります。つまりえびす講とは、えびす様を信仰する人たちの集いのことです。えびす講は、えびす様のご利益である「商売繁盛」を願って開催されます。えびす様の呼び方によって「恵比寿講」「恵比須講」「戎講」「蛭講」「ゑびす講」などと表記されることもあります。

えびす講が行われる時期

えびす講が行われる日程は地域によって異なりますが、毎年1月10日、1月20日、10月20日、11月20日などに行われることが多いです。関東地方では、1月20日や10月20日に行われる傾向にあります。このように月の20日に開催されるえびす講は「二十日えびす」と呼ばれます。一方で、関西地方では1月10日に行われることが多いです。同様に、月の10日に開催されるえびす講は「十日えびす」と呼ばれます。

えびす講の由来とえびす様

えびす講は日本各地で古くから執り行われてきた行事です。ここでは、そんなえびす講の由来や、えびす講で祀られる神様「えびす様」について解説します。えびす様を含む七福神の特徴についても触れるので、ぜひチェックしてみてください。

えびす講の由来

えびす講が行われる旧暦10月には、「神無月(かみなづき、かんなづき)」という呼び方があります。この神無月という別名には、日本全国にいる八百万(やおよろず)の神様たちが、旧暦10月に出雲大社に集まり、話し合いをするという伝説が関わっているのです。

 

このように多くの神様が出雲大社に集まる一方で、地域に残って留守番をして、土地や人々を守ってくれる神様もいます。そのうちの一人がえびす様です。旧暦10月の神無月に開催されるえびす講は、留守神であるえびす様への感謝を伝えることから始まったとされています。

そもそも、えびす様とは

えびす様は、七福神の一人でもあり、五穀豊穣や商売繁盛のご利益で信じられている神様です。その姿は、右手に釣り竿を持ち左手に鯛を抱えているのが特徴で、烏帽子をかぶった大らかな笑顔の神様として描かれています。

 

なお、えびす様以外の七福神は、以下のような姿形をしています。どこかで七福神とたくさんの財宝を乗せた「宝船(たからぶね)」の絵図などを見かけたら、ぜひえびす様の姿を探してみましょう。

 

*大黒天(だいこくてん)…頭巾をかぶり、右手には欲しい物がなんでも出てくる「打ち出の小槌(うちでのこづち)」を持ち、大きな袋を背負っている神様です。

*毘沙門天(びしゃもんてん)…武将の姿をした神様です。右手には「宝棒(ほうぼう)」、左手には「宝塔(ほうとう)」を持っています。

*寿老人(じゅろうじん)…白い顎髭をたくわえた、仙人の姿をした神様です。巻物の付いた杖を持っているほか、長寿を象徴する鹿や桃と共に描かれることも多くあります。

*福禄寿(ふくろくじゅ)…頭が長く、白い顎髭をたくわえた仙人の姿をした神様です。手には杖や巻物を持っています。長寿を象徴する鶴や亀と共に描かれることがあるのが、寿老人との違いです。

*弁財天(べんざいてん)…美しい天女の姿をした神様です。手には弦楽器の「琵琶(びわ)」を持っています。

*布袋尊(ほていそん)…たっぷりとした太鼓腹と、大らかな笑顔が特徴の神様です。手には団扇を持ち、「堪忍袋(かんにんぶくろ)」を背負っています。

えびす講で行うこと

えびす講では、主にえびす様へのお参りと、お供えが行われます。えびす様をお祀りする神社を参拝して、露店で熊手や福笹(ふくざさ)などの縁起物を買う人もいます。また、家庭の神棚にお供物をするのもえびす講での風習の一つです。その際は、お酒や食べ物、縁起物などをお供えします。なかには、鯛を抱えるえびす様にちなんで、生きた魚をお供えする地方もあるようです。お住まいの地域のえびす講ではどのような風習が続いているのか、確認してみると良いでしょう。

有名なえびす講

全国各地では、現在でも年中行事としてさまざまな「えびす講」が開催されています。えびす様に祈願したいことがある方は、有名なえびす講へ足を運んでみてはいかがでしょうか。最後に、「日本橋べったら市」「十日えびす」「長野えびす講煙火大会」の3つのイベントをご紹介します。

日本橋べったら市

日本橋べったら市は、東京都日本橋にある宝田恵比寿神社の門前で開催されるえびす講です。毎年10月20日に行われる恵比寿神祭の前日、19日にべったら市が開かれます。「べったら市」という名称は、かつてお供物を売る市で大根のべったら漬けが売られていたのが由来だとされています。江戸時代から続く、日本橋の秋の風物詩です。宝田恵比寿神社は商売繁盛のご利益で信じられており、えびす講の2日間には500軒近くの露店が並び、多くの人が集まります。

十日えびす

十日えびすは、兵庫県西宮市にある西宮神社で開催されるえびす講です。西宮神社は、えびす様をお祀りする神社を取りまとめる総本山として知られています。そんな西宮神社のえびす講は、毎年1月9日~11日に開かれます。例年、百万人近くの参拝客が訪れるほどの賑わいを見せる大きな行事です。阪神間で最大級のお祭りとして、全国的な知名度を誇ります。特に、1月10日に神社の赤門から本殿を目指して多数の男性が全力疾走する「福男選び」の神事が有名です。

長野えびす講煙火大会

長野県では、長野市にある西宮神社で毎年11月18日~20日にえびす講が開催されます。このえびす講の後、えびす様への感謝の気持ちを込めた花火を打ち上げる行事が、長野えびす講煙火大会です。1995年の冬季オリンピック以降は、国民の祝日である11月23日に花火大会が行われるようになりました。長野えびす講煙火大会は花火師の間では「出世煙火」とも呼ばれ、全国屈指の花火師が集まることで有名です。

ぜひ全国各地のえびす講へ足を運んでみましょう!

ここまで、えびす講とは一体どんな行事なのか、基礎知識をお伝えしました。えびす様をお祀りするえびす講は、全国各地の神社で開催されています。例年「二十日えびす」や「十日えびす」の日には神社や門前に露店が並び、多くの人で賑わいます。商売繁盛を祈願するなら、ぜひえびす講へ足を運びましょう。神社を参拝するとともに、地域に根付いた特色あるイベントをお楽しみください。