茶道のマナー|服装や席順、お茶の飲み方・お菓子の食べ方は?

茶道は、亭主が客人をおもてなししてお茶を振る舞う、日本の伝統的な儀式です。「茶の湯」とも呼ばれます。戦国時代から安土桃山時代に活躍した茶人、千利休が大成させました。今では「表千家」「裏千家」「武者小路千家」などの複数の流派が存在し、茶道の精神が現代まで受け継がれています。

 

そんな茶道のお茶会(お茶席)に招かれたら、基本的なマナーを確認しておくようおすすめします。ここでは、茶道の服装や席順、お茶やお菓子のいただき方などをご紹介します。

茶道の基本のマナー

初めに、茶道で押さえておきたい基本的なマナーをご紹介します。茶道には複数の流派があり、それぞれ作法が異なる場合があります。基本のマナーを踏まえた上で、自分が学ぶ流派の作法を確認しておくと安心です。

入室と着席

茶室に入る前に身を清めて心を整えるため、初めに手水鉢で手を洗います。「失礼します」と亭主に声をかけてから入室しましょう。お茶席で亭主に一番近い場所に座る人は「正客(しょうきゃく)」、一番遠い場所に座る人は「末客(まっきゃく)」と呼ばれます。正客は客人の代表者です。亭主と会話しながら当日のお茶や茶道具などについて質問する役割があります。一方で、末客には拝見に回ってきた茶道具を亭主の元へ返す役割があります。いずれも茶道の豊富な知識や周囲への気遣いが求められるため、初心者の方は正客や末客を避けて着席すると安心です。

お茶の飲み方

お茶をいただく前に「お点前(てまえ)頂戴いたします」と言ってお辞儀をします。お茶を飲むときは、左手にお茶碗を乗せて、右手を添えるようにして持ちます。右手でお茶碗を時計回りに2回回してから口をつけましょう。お茶は一気に飲み干さず、3~4回に分けて飲み切ります。飲み終えたら、飲み口を右手の人差し指と親指でぬぐって清め、懐紙で指を拭き取ります。初めと同様に、右手でお茶碗を時計回りに2回回して、絵柄が描かれている正面を亭主側へ向けてください。この状態で、お茶碗を出された位置に戻します。

お菓子の食べ方

お茶菓子は、お茶を飲む前にいただきます。亭主から「お菓子をどうぞ」と声がけがあるので、「お菓子を頂戴いたします」と言ってお辞儀をしてから食べ始めましょう。お菓子を食べるときは、懐紙や菓子切り(菓子楊枝)などの道具を使います。菓子器に出されたお菓子を懐紙の上に移してから、懐紙を左手の平に乗せて、右手を使っていただきます。生菓子の場合は、菓子切りを使って一口大に切り分けて食べましょう。お菓子を食べ終えたら、使用済みの懐紙はめくって折りたたみ、持ち帰ってから処分します。

茶道の服装に関するマナー

茶道教室のお稽古に通ったり、お茶会に参加したりする際は、茶道にふさわしい服装を心がけましょう。ここでは、茶道に着物で参加する場合の服装のマナーを、男性の装い・女性の装いに分けてそれぞれ解説します。

男女共通のマナー

・アクセサリーを着用しない

茶道では、お茶碗などの大切な道具を傷つけるのを避けるため、アクセサリーを着用しません。指輪や腕時計は、茶室へ入る前に外しておくのがマナーです。その際、アクセサリーケースなどの入れ物を用意しておくと、外したアクセサリーを紛失する心配がありません。

 

・白足袋(白い靴下)を着用する

お茶室へ入る際は、清潔な白足袋または白い靴下を着用するのがマナーです。白足袋や白い靴下には、お茶席に清浄をもたらす意味合いがあります。茶道では、千利休の精神を表す「和敬清寂」が重視されています。このうち「清」は、お茶室や茶器などを清浄に保つことを指し、白足袋の着用もこれに含まれるのです。茶道の流派によっては、お茶室へ入る直前に清潔な白足袋に履き替える場合があるため、必要に応じて予備の白足袋を用意しておきましょう。

男性

茶道における男性の和装では、基本的に紋付きの袴を着用します。着物の色は鼠色や紺色、利休色などの派手すぎない色味が望ましいでしょう。袴の種類は馬乗袴(ズボンのような形状)が一般的です。また、行燈袴(スカートのような形状)という選択肢もあります。なお、羽織は外出の際の防寒や埃よけであることから、茶席では着用しません。

女性

茶道における女性の和装では、基本的に準礼装である紋付きの色無地や訪問着へ袋帯を組み合わせて着用します。また、気軽なお茶会では上品な雰囲気の小紋に名古屋帯を組み合わせて着用することもあります。客人側は亭主よりも着物の格が高くならないよう配慮しましょう。お茶会によって適切な着物の格が異なるため、事前に確認しておくと安心です。

茶道のマナーに関するよくある質問

最後に、茶道のマナーに関するよくある質問とその回答をご紹介します。茶道ではおもてなしやお茶のいただき方に特有の作法があることも。日本文化に関心を持っている方は、初めて茶道体験やお茶会へ参加する前に、よくある質問について確認しておきましょう。

お茶会には洋服で出席しても良いですか?

茶道の服装は和装が基本とされますが、お教室によっては洋装でもお茶会への参加が可能です。洋服で参加する場合も、服装のマナーを守りましょう。

 

洋服で出席する場合、足元は男女ともに白い靴下を着用します。男性の場合、ダークカラーの無地のスーツなど、フォーマルな服装が適しています。女性の場合、パンツスタイルや膝下丈のスカート・ワンピースなどが望ましいでしょう。お茶会では正座をするため、スカートスタイルでは正座をした際に膝が隠れる丈が目安となります。ストッキングを着用する際は、白い靴下を重ね履きしましょう。また、肌の露出は控えめにするのがポイントです。

茶道で茶碗を回すのはなぜですか?

茶道のお茶会で出されたお茶を飲むときは、まずお茶碗を回してから口をつけます。この作法には、お茶碗の正面を避けていただくことで謙遜し、亭主への敬意を表す意味合いがあるのです。お茶会で使われるお茶碗には、絵柄などが美しく見える正面の位置があり、亭主は客人のほうへ正面を向けておもてなしします。それに対して、客人はお茶碗の正面を避けるために、お茶碗を回す動作を行います。

「お点前頂戴いたします」とはどういう意味ですか?

茶道では、客人がお茶をいただく際に「お点前(てまえ)頂戴いたします」と言ってお辞儀をします。「お点前」とは、お茶を点てる一連の所作のこと。つまり「お点前頂戴いたします」という声がけには、おもてなしをしてくれた亭主に対して感謝を伝える意味合いがあるのです。このほかに、客人がお茶をいただく際は、お隣にいる方に「お先に」と声がけします。茶道では、客人同士が互いに思いやり、楽しいお茶会にするための心遣いも大切にされています。

 

茶道の基本的なマナーを押さえてお茶会に参加しましょう!

ここまで茶道の基本的なマナーをご紹介しました。日本文化へ関心があり、これから茶道を始めたいと考えている方も多いでしょう。茶道では、お茶やお菓子のいただき方から、服装に至るまで、さまざまな決まりごとが設けられています。茶道には複数の流派があり、流派によって作法が異なる場合があります。お茶会やお稽古では各流派の先生の指示に従い、マナーを守って参加しましょう。

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