荷宝蔵壁のむだ書 歌川国芳



「荷宝蔵壁のむだ書」

(にたかべぐらかべのむだがき)

1847年(弘化4年)頃



天保の改革以来、役者浮世絵には出版差し止め令が出ていました。そこでなんとか出版しようと、絵師や版元は工夫していきます。

この絵は「これは浮世絵ではない。落書きだ」というわけです。

当時の人には、歌右衛門や幸四郎、梅幸が見て取れるのでしょう。真ん中のネコに至っては、二尾のねこまた。楽しそうに踊っています。

こうした遊び心こそ、贅沢に感じられます。

こちらは 釘絵(くぎえ)と言われ、国芳の手になる釘でひっかいた落書にもして書いた絵のこと。
他にも「白面笑壁のむだ書き」など役者似顔絵があります。

「みんなわらつているやうだ」「なるほどあいかハらづ」などの文字や「国よしゑがく」といった署名、版元伊場仙の印なども同様の釘絵の筆致で書かれています。今の漫画にも通じる痛快ぶりですね。